【本・作品紹介】変な地図

趣味

(画像引用先:双葉社

今回は、数々のヒット作を生み出しているミステリー作家・雨穴さんの最新作「変な地図」を紹介します。これまでの作品と打って変わったような作風に驚かされる本作の魅力について記載していますので、気になる方は是非ご覧ください!

変な地図

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作品

本作は2025年10月から出版されている作品で、作者は本ブログでも何度か紹介している雨穴さんです。

雨穴さんは他にも作品を出版しており、2024年には書籍売り上げ1位を成し遂げました。他作品については以前にまとめておりますので、よければそちらもご確認ください。

双葉社から出版されている本作ですが、発売前から「初版20万部」および「発売前重版5万部」の計25万部という異例のスタートを切っており、発売から3週間で50万部を突破しています。

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あらすじ

大学生の栗原が就職活動に勤しむ中、ある日、父親に呼び出されて実家へ帰ることになる。

そこで、亡くなった祖母の家の相続について話があり、話を聞いて興味が湧いた栗原は、実際に祖母の家を見てみることに。

しかし、同行した父親の様子がおかしいことと、家の中の妙な空気に違和感を感じ始めた栗原は、祖母の家をくまなく調べ始める。

調べた内容を基に父親を問い詰めた結果、祖母が家の浴室で亡くなっていることが明かされる。

さらに、祖母は「謎の地図」を握りしめた状態で発見されたことを知り、隠されていた地図自体も見つけることに成功する。

謎の地図、祖母の死の真相。そして、垣間見える亡き母の痕跡。

好奇心が抑えきれなくなった栗原は、全ての謎を解き明かすために旅へ出ることを決意。父親の制止空しく、一人、解明の旅路へ足を運び始める…

 

感想※ネタバレ注意

若き日の栗原さんが繰り広げるミステリアスな冒険物語

本作では我らがアイドル・栗原さんの若き日を拝めると共に、栗原さんが繰り広げる大冒険を終始楽しむことが出来る内容になっています

栗原さんは、雨穴さんの作品に度々登場するミステリー大好きな設計士の男性で、これまでの作品でも大活躍してきた人物です。

今回は、そんな栗原さんの大学生時代が舞台となっており、彼の祖母が握りしめていた地図の謎を解明する旅に出るところから物語が始まります。

そこから様々な人物と出会い、現地の調査を行っていくのですが、調査の途中で事故に巻き込まれたり怪我をしたりと前途多難な旅路を進んでいくことになります。

そして、最後にはとんでもない事実が明らかになり……というのが大まかな内容です。

冒険にしては内容が薄いとこもありますが、ミステリーとしては申し分ない出来栄えだと思いました。

しかし、本作で注目してほしいのはそこではありません。注目してほしいのは、栗原さんの感情や過去について語られる部分です

今までの作品を読んでいると、栗原さんという人物像が「冷たい」「感情がない」といった冷徹な印象を受けることがありましたが、本作ではその理由が明かされることになります。

端的に言うと、栗原さんのルーツを知ることが出来るのです。

どうして感情を殺すようになってしまったのか。そこには栗原さんの過去が関係しており、涙なしには読めない内容になっています。私は思わず泣いてしまいました。

これまで「変なシリーズ」を読んできた方には必見の作品なので、読まれてない方は間違いなく読んだほうがいいです。

 

シリーズで類を見ない作風と優しいミステリー

本作は他作品と大きく作風が異なり、新規の方でも読みやすい冒険物語になっています

これまでの作品だと、架空の取材資料を基に真相へ向かっていくモキュメンタリー方式をとっていました。

一見、何のつながりもなさそうな複数の資料が、読み進めていくうちに伏線が回収されて、最後には一つの真相につながる。これが、雨穴さんの作品の流れです。

対し、本作では架空の資料をつなぎ合わせた内容ではなく、主人公の歩む先が物語になる王道の冒険活劇になっており、これまでの作風とは打って変わったような内容になっているのが特徴です。

中身のミステリー要素も優しめに設定されており、「冒険ミステリー」という感じでサクサク読み進められます。

あまりのサクサク具合に、私は6時間程度で読み終わることが出来ました。

そして、内容も非常に分かりやすく、シリーズ恒例の間取り図や地図といった「図」の要素も相まって、頭に内容が入ってきやすいところが良かったです。

さらに、これまでのシリーズを読んでいなくても十分楽しめる物語構成になっており、シリーズものでは無く、一つの作品として読めるところも新鮮さがあって読みごたえがありました。

このことから、新規の方にとって非常に読みやすい内容や環境を整えている作品であることが分かります。

しかし、作風やミステリー要素の濃さはこれまでの作品と全く違うので、シリーズのファンなら賛否両論になると思います。

栗原さんのファンである私は神作品だと思っていますが、純粋に雨穴さんのミステリーを楽しみたいファンの方にとっては、少し物足りない内容になっているのかもしれません。

作風もモキュメンタリーとは全く違うので、これまでの形式が面白くて読んでいた方にとっては残念に感じる部分も少なからずあると思います。

シリーズファンには間違いなく読んでほしい作品ではありますが、そういった内容であることは知っておいた方がいいかもしれません。

それを知ったうえで読んでみて下さい。

 

地図を活用した物語構成と分かりやすい解説

これまでの作品も「家」や「絵」といったタイトルに含まれる要素を活用して物語が構築されていましたが、本作もタイトルになっている「地図」という要素を上手い具合に活用し、物語に組み込まれています

「変な家」では多種多様な間取り図が度々登場し、「変な絵」ではタイトル通り様々なイラストが作中で公開されました。

そんな中、本作で登場する地図は2枚のみです。これが基盤となって物語が展開していくという流れになります。

その内の一枚は図面に妖怪が描かれた不気味なのもので、正式な地図の形式をしているわけではありません。

しかし、そんな見方すらわからない謎に満ちた地図でも、物語の中ではしっかり「地図」としての役割を果たしていたり、物語の根幹に関わっていたりするので、読んでいて非常に面白かったです。

もう一枚は、本作で栗原さんが訪れる母娘山という山の周辺地図です。こちらは登場人物の現在位置を示す役割があったり、栗原さん達が推理をする時に使われています。

その際に地図に関する専門用語も登場しますが、初心者でも地図の読み方が分かるように軽い解説を挟んで物語が進行していくので読みやすく、理解しながら読むことが出来ます。

そのおかげで、私は地図の作成に関わる「三角点」という言葉を知ることもできました。そういった知識的な面白さも、このシリーズの醍醐味だと思います。

この作品においての「地図」という要素は、物語の進行をスムーズに進める役割を担いつつ、かつ、根幹に関わっていくという重大な役割を果たしているのです。

さらに、書籍には読者考察用の特大マップが付録として付いており、そちらを見ながら読み進めることで大いに考察がはかどります。

それだけでなく、地図を参考に調査する栗原さん達と同じ舞台に立てているような感覚も味わえるので、栗原さんのファンである私の歓喜は収まるところを知りませんでした。

そういった楽しみ方もできるので、読むときはそちらの付録も活用してみて下さい。

 

まとめ

シリーズで類を見ない、新規に優しいミステリー冒険活劇「変な地図」いかがでしたでしょうか。

これまでの作風と打って変わって冒険要素が含まれている本作の魅力が少しでも伝わっていると幸いです。

さらに、これまでのシリーズでも度々登場した栗原さんがメインとなる物語なので、彼のファンなら必読間違いなしの内容です。

まだ読まれてないファンの方には、是非とも読んでいただきたいです。本作を読んで、栗原さんと共に調査をしているかのような感覚を味わってみて下さい。

また、書籍版には雨穴さんの物語朗読動画用のQRコードもついているので、気になる方は是非そちらもチェックしてみて下さい。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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